肝動注化学療法
(New FP療法)
肝がんはステージ4になると極めて予後が悪くなります。
現在の標準治療は肝がん診療ガイドラインによると、全身化学療法が第一選択とされています。
全身化学療法にはネクサバール、スチバーガー、レンビマなどの飲み薬が使われます。
今後も様々な薬剤が使われる様になりますが、それでもステージ4という状態を克服することは難しいのです。岩本内科医院ではこの様なステージ4の肝臓がんに対してカテーテルを用いた治療、「肝動注化学療法 New FP療法」を行っております。
肝動注化学療法とは
カテーテルを肝動脈に埋め込み、持続的かつ直接、抗がん剤を肝臓内のがんへ送り届ける手法です。カテーテルを埋め込む技術は比較的難易度が高く、限られた施設でしか行われておりません。
New FP療法の進行肝臓がん(ステージ4a)の治療成績をAlimentary and therapeutics 2010、Cancer chemotherapy and pharmacology(2016)77:243-250、Molecular And Clinical Oncology(2017)7:1013-20で報告しております。
これまでの肝動注化学療法
ステージ4aの進行肝臓がん(未治療で3ヶ月から6ヶ月の余命)には、ネクサバール(一般名 ソラフェニブ)、レンビマ(一般名 レンバチニブ)などの内服の抗がん剤が治療選択肢の一つとして挙げられます。
しかし、肝臓がんが門脈などの太い脈管に入り込んだ状態になると、なかなか一つの治療だけでは制御できません。
そのような患者様のために、肝動注化学療法はこれまでに以下のような様々な方法で実施されておりました。
- Low dose FP(低用量シスプラチン + 5 - FU動注療法)
- FAIT(インターフェロン、5 - FU動注療法)
- シスプラチン単剤動注
岩本内科医院での
肝動注化学療法
岩本内科医院ではこれまでの治療薬剤とは異なる、肝動注化学療法 New FP療法という方法を
患者様に積極的に導入して治療を行います。
肝動注化学療法は、ソラフェニブやレンバチニブの様な内服の抗がん剤治療のように、
- 大規模な臨床試験が行われていない事、
- 肝動注化学療法を行うためのカテーテル留置術の難易度が高い
などの理由により、多くの施設では肝動注化学療法は行われていないのが現状です。
これらの治療は全て保険診療内で行われる事にもご留意ください。
New FP療法の治療効果
これまでの200名を超える進行肝臓がん(ステージ4a)の患者様の蓄積データから、
- 奏効率が約70%
がんの縮小効果が期待できる - 完全奏効率20%~30%
追加治療を含めてがんをゼロの状態にできる可能性が10名中2名 - 生存期間の中央値は25~30ヶ月
のデータを報告しています。
カテーテル留置術について
カテーテル留置術は以下のような方法で実施されますが、これらの技術は非常に難しい為、多くの施設では行われていません。
- カテーテル挿入
- CT撮影
- がんの塞栓を安全にカテーテルに留置するための準備
- カテーテル留置
- GDAコイル法
- 投げ込み法
- コアキシャル法
- システム-I
- 接続ポート埋め込み
局所麻酔を行った後に右足の付け根部分の動脈(鼠径動脈)からカテーテルを挿入します。
がんが存在する肝臓の動脈(肝動脈)までカテーテルが到達し、血管造影検査を行い、血管の状態を正確に把握します。
加えて、当院では同時に血管造影を行いながらCTを行い(アンギオCT)、がんの状態を正確に把握します。
肝動脈の手前には胃、膵臓、十二指腸などの動脈が分岐しており、これらをコイルと呼ばれる金属の糸状の物質で塞栓(詰める)することで、薬剤ががんの存在する肝臓だけに到達できる様にします。
この処置により、各動脈に抗がん剤などの薬剤が流れてしまうと合併症が起きるリスクの防止にもつながります。
次に、カテーテルを肝動脈に留置します。この際、以下の4つの手法を用いて、患者様の血管やがんの状態、肝臓の状態に最も合った形で肝動注化学療法用のカテーテルを留置(設置)します。
カテーテル留置の種類
症例1
固有肝動脈造影
肝動注化学療法 カテーテル留置前
固有肝動脈造影
肝動注化学療法 カテーテル留置後
症例2
当院初診時CT
20cm肝臓がん Stage 4A
3ヶ月後CT 白色の薬剤が腫瘍内に貯留し壊死
その後、外科切除が可能となった
最後に、足の付け根部分に新たに局所麻酔を行い、接続ポートを皮下に埋め込みます(2cm程度の大きさ)。ポートに針を刺せばいつでも、点滴をするかのようにがんが存在する肝臓の動脈に直接抗がん剤を投与する事が出来る様になります。